インドのピラニア

野球・相撲 時々その他 自由きままに書く インドのピラニアのように

周りと闘い続けた白鵬の相撲人生

とうとうこの時が来たか。そんな感じだ。





2021年9月28日。遂に、あの大横綱白鵬が引退するという。優勝45回という、前人未到の地に「到達」というより、最早「住んでいる」と言った方が良いのかもしれない。そんなポツンと一軒家になって久しいあの傑物がやめてしまうのである。f:id:mochan9393:20211007231440j:plain





こう言ってはいるが、過去ずっとこのインドのピラニアにて、その白鵬の強さを語り尽くしているので、これからまた語るのも、ダブリが出てしまうかもしれないが、一読していただけると幸いである。
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「なぜ白鵬は強いのか」では、白鵬の強さについて語ったが、ここでは思い出話中心に、客観的ではなく、主観的に振り返っていこうと思う。





私が相撲を観始めたのは、中学1年生からで、2006年の初場所からがっつり観ているのだが、当時は相撲についてあまり詳しくなく、最初から注目していた訳ではなかった。





というのも、この場所は栃東が8場所ぶりに朝青龍から賜杯を奪還して、久しくなかった日本人賜杯を貰っていた。その攻防に相撲の面白さを感じて、相撲を見てみようと思ったわけである。





しかし、そんな外国人しか貰わない期間が、それから10年も続いてしまうとは。こればっかりは想像できなかった。年6場所が10年だから60場所。そのうちの35回が白鵬というのはどういうこっちゃ。その10年間だけで、それまでの優勝記録を全部抜いている訳である。





高校の時、朝青龍白鵬の千秋楽相星決戦があって、その日に高校のクラスの打ち上げがあって、お好み焼き屋でどんちゃん騒ぎしたことがあった。横にボタンが付いたガラケーで、ワンセグ立てながら、クラスの輪に入りつつ、その1番を見届けていた。




まぁ簡単にいえば、それだけ昔から横綱をやっているのである。2021年現在、前述の数行は全てが過去の遺産となり思い出として、脳みその奥深くに眠っていた。ちょっとタンス臭い、年季の入った文章だというのに、その時代から横綱やっちゃってるのである。関取でも長いのに、横綱なのである。





朝青龍がいた時の白鵬は、あくまで黒子に徹していた。あまり言葉数も多くなかったし、朝青龍が良くも悪くも目立っていたから、注目もそれ程無かった。大関時代は、新大関で優勝してから少し相撲に悩んでいたし、横綱になってからも朝青龍中心で土俵が回っていた。





ただ、この当時の相撲はずっとピリピリしていて、いつ朝青龍がダメ押しするんだとか、なんかまた問題起こして内館牧子にウダウダ言われるのかが、兎に角気になって、相撲を観るどころじゃなかった。もっと言えば、白鵬に注目している暇が無かったのだ。





相撲ファンと公言して「何で相撲観るの?」と言いたげな同級生の視線が目に刺さる。かなりの物好きが見るスポーツになっていた。横綱に目線を配らない時期って何だよ。と思うかもしれないが、当時から相撲ファンだった俺の正直な感想である。





そんな白鵬が注目されたのは、あの「土俵じゃなかったら始まってるね」事件だろう。朝青龍のやり過ぎているダメ押しに、ついカッとなってプッツンしてしまったのである。





間違いなく相撲史に残る暗黒時代の訪れである。当時の相撲を観ていて「終わった...」と思ったのは、後にも先にもこの1番だけである。廻しを脱がされた以上の、放送事故がそこにあった。まぁこれはそんな暗黒時代の始まりに過ぎなかったのだが。





こうして振り返ると、白鵬が辿った相撲人生というのは、常に相撲を取り巻く環境が下り坂なのである。これは他の横綱には無かった点である。明確にマイナースポーツに分類された瞬間に、居合わせた横綱2人。その片翼の物語が、これでもまだ始まったばかりである。
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それからの八百長問題という未曾有のスキャンダル。この下り坂な流れから、「どん底なんてねぇんだよ。」とメンヘラ中二少年が預言していたような、下げ止まることのない評判。





まぁ辟易していたものである。相撲が調子よくなったとして、明らかに見ないタイプの人がやんややんや言っているし、技量診査場所とかいう、全くもって聞き慣れない1場所が生まれたのもこの時期である。それが開けても、国技館の中は、セルフで3密を避けているのかな?と疑うほどお客が入っていなかった。





そんなピンチもピンチな時に、誰が相撲を支えて盛り上げたと思っているのか。白鵬である。何も文句を言わずに遮二無二勝ちまくり、63連勝という神の域にまで手を伸ばしていた。その連勝が途絶えた日も、会場はセルフ3密していて、歴史が動いた日だというのに、ほとんど目撃者が居ないのが、ファンからしたらどれ程悔しかったか。





そんな時代もありつつ、遠藤の登場によってある程度人気を持ち直し、日馬富士鶴竜稀勢の里という4横綱を生み出しつつ、豪栄道琴奨菊琴欧州把瑠都などの大関陣も揃った13年辺りから、日馬富士の「デンモクバンバン事変」が起こった17年末まで、若貴時代にも劣らない、充実した面子が揃っていたと思う。





特に若貴という、相撲を調べるにあたり避けては通れない、あの狂気じみた熱狂が去って四半世紀。「第2の若貴」という、「あるようで実はもう存在しえない」蜃気楼のようなブームを、どこか相撲ファンは追い求めていた訳だが、白鵬が嵐の時代を支え切り、なおかつその蜃気楼に対し、納得できる回答をファンに示したと思う。





NHKという、持続的に放送を続けてくれる媒体を持ちつつ、若貴のような毎場所30%を超えるような、悪魔じみた視聴率は残せなくとも、毎日のように満員御礼の垂れ幕が下がっていた。根強いファンが足を運ぶので、客足の急激な低下が抑えられる。Amebayoutubeの台頭にも、専門チャンネルと放送枠を設け、少なからず裾野を広げた。スキャンダルもそれほど、正しく理想的な期間だったと言える。





しかし、それとは別に白鵬が33回目の優勝という、かつて大鵬が持っていた不滅の記録、32回を超えたあたりから、白鵬の見えない何かが崩れているような気がした。





ダメ押しと、ラフプレーとも取れる、強烈すぎるかちあげが目立つようになった。私のような、朝青龍の時代から大相撲を見ていた人からすれば、まだ免疫はあるけれども、お客の大抵は半世紀前から相撲を見ているのである。次第に白鵬を嫌う人が多くなった。





加えて、白鵬なりの自己主張も増えていた。優勝後に全員で万歳三唱したり、もつれた勝負の時に自ら手を挙げて、ものいいを申告しようとしたり、優勝後翌日の会見で、行事の裁定に文句を言ったこともある。これまで何も文句を言わず、相撲と向き合っていただけに、白鵬の突然の豹変に目を白黒させた。





まぁ確かに、優勝して万歳三唱だなんて、ちょっと政治色が臭ってしまって怖いし、ちゃんと厳かに迎えなきゃいけないと、エチケットをわきまえている場面での、ノープランの万歳三唱。ちょっと申し訳にくいけど、思い切りが過ぎる感じがした。

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でも会場の空気はそれほど気にしてもいなかったことも付け加えたい


しかし、時は同じくして、当時の観客が取った対応も酷いもので、稀勢の里が勝ったら万歳三唱したり、対戦力士に対してコールしたりと、白鵬の勝利を全く望んでいなかった。これは「勝ち過ぎて嫌われていた」北の湖にも「勝ち過ぎていたし、しっかり迷惑かけていた」朝青龍にも、決して行われなかった現象である。





ここだ。ここなんだ。俺が伝えたいことは。ここに他の横綱白鵬の決定的な違いがある。それは、おそらくではあるが「周りの見る目が変わった」のである。





万歳三唱したり、白鵬の文句を嫌っていたのは、間違いなく俺よりはるかに上の世代。白黒テレビないし街頭テレビから見ていた人たちだった。つまり既存のファン勢力だった。





従来より見たファンが万歳三唱したり、コールしているなら分かる。相撲観戦のマナーが浸透していないのだろうと察せられるから。だが、相撲の風紀を乱しているのは、他ではない「かつて支えていたファン」なのである。
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何てことはない。「相撲協会が腐敗している」とか、「貴の乱」が相撲を乱しているのではない。(いや、乱してはいるけど)





ただ、「ずっと見ていたファンが老害になった」だけである。これは極論だし、議論の余地はまだかなり残している。でも、あのコールを先導していたと思われる顔ぶれに、「平成生まれっぽい顔」が混じっていたようには全く思えない。





いつかのネットニュースで見た、ケンドーコバヤシの「お笑い界は破滅する」という記事で、ケンコバが危惧していたことと、全く同じことが起こっているのではないかと思ってしまう。




「これまたプロレス界からの引用になっちゃいますが、『マニアがジャンルを潰す』という言葉があるんですよ。僕もそのマニアの一人でした。先鋭化し過ぎて、何か、認めなくなってくるんですよね。『こんなの甘い』と。そんな状況になってくる。プロレス界が一回破滅する直前に、前田日明さん(元プロレスラー。現「The Outsider」プロデューサー)とかがやり始めたのがプロレスや格闘技を語ること。あれが発端でした。それと今のお笑い界が非常に似ています。正直、本当に俺はビビっています」*1



この提言に対して、心当たりがある出来事が多すぎる。上記のファンの反応がそれだと思うし、ましてや歴史だけ積みまくっている相撲である。もう「認めない」の先の領域まで、ひょっとしたらここ数年で入ってしまったのでは?と。「横綱の品格」とか、まるっきりこれじゃないか???と。っていうか、これが起こって何年たったんだ?????と。





白鵬の相撲人生というのは、そんな「マニアがジャンルを潰す」。これとの闘いでもあったような気がする。乱暴な相撲を少しでも取ると、「横綱の品格」だとか言われるし、中高年のファンは次第にその態度を会場で示すようになった。かつて大ピンチになった時に誰が支えたのかも忘れて。





私は、朝青龍はかねがね好きではないと、もうしつこいように伝えてきたし、対照的に白鵬は最も好きな力士と言っても差し支えない。素行面でどちらも問題があった(と言われている)が、その2人の差は、間違いなくこの時期にある。苦しくなったときに誰が支えていたのか。マジで剣ヶ峰のピンチに誰が仕切っていたか。





だから、白鵬に文句を言うというのは、相撲に対し後ろ砂をかけることと同義だと思う。そしてここ一連の流れを見るに、もはや砂ではなくうんちを投げつけているのと同じ。一代年寄剥奪~誓約書記入まで、見ているこっちがムカつくムーブであった。





人種差別をみたいなら相撲を見ろ。どす黒い人間が見えてくる。しかも白鵬は、帰化したから紛れもない日本人である。つまり「日本人横綱」に、とやかく言っているのと同じである。これが「マニアがジャンルを潰す」である。









つまりこういうことである。もう悲しい話なのだが、相撲を取り巻く環境はこんなもんである。これは断じて極例ではない。残念ながら、これが「多数派」である。youtube白鵬現役最後の1番でも見たらいい。Badの方が圧倒的に多いから。





早い話が、「日本人の記録をほぼ全て塗り替えた外国人」を、気に食わない人達の方が多いのである。信じられない話だけど。もうそれほど旧態依然なのである。協会だけの話ではない。ファンが旧態依然なのである。





そして、それほど白鵬が嫌われていることを、俺と同世代。つまり「平成一桁世代で知っている人もほぼ居ない」のである。良くも悪くも、相撲の影響力はそんな程度である。





しかし、「そんな程度」まで持ち直したことも、奇跡に近い業績であったと、「ジャンルを潰す」人達は知る由もないし、知っているふりをしながら、昔に思いを馳せているのである。





嗚呼。本当に疲れた。相撲ファンを続けることが。何だよファン続けることが疲れる競技って。





なんで知らないうちに、舞の海の思想がキツくなっているのか。だから最近、白鵬の相撲に対してケチをつけていた訳ね。白鵬だけならまだしも、それに紐付けて日本人力士の不甲斐なさを語るのは、マジで勘弁してくれ。荒磯親方に、向正面の席を取られるぞ。





白鵬の相撲人生を振り返ってみると、どうも土俵上よりも、土俵外で闘っている場面の方が多いような気がする。これは貴乃花にも朝青龍にも言えることだ。「敵は土俵だけじゃない」のが、平成の大横綱の宿命なのかもしれない。





そのような環境下でも、白鵬は相撲普及に尽力を怠らなかったし、白鵬杯が良い例である。中学生以下の大相撲大会を作り、参加者は1000人を軽々越えている。その大会の参加者である阿武咲が、10年の時を経て白鵬を倒している。率先してライバルを作ろうとする。漫画の強者の表現を地で行く男。それが白鵬





これに加えて、既に部屋で内弟子を採用している。その内弟子が3人関取になっているので、「親方になる資格があるのか」という、ケチをつけた人達に改めて問いたい気分である。「あなたこそ親方の資格がありますか?」と。





現在、私は28歳になるが、中学1年生から見ていた力士が、今まで現役を続けていること自体、ちょっと目を疑ってしまう現実である。





そう言えば、こちらも姿が変わらないデーモン小暮が、白鵬引退についてコメントしていた。白鵬の功績を称え、リモート取材で映る壁に、白鵬グッズを敷き詰めていた。





人間よりも悪魔に評価されているという、ここから闇墜ちしそうな白鵬だけれども、果たしてどちらが悪魔なのか。そんな禅問答を土俵に残し、日下開山は引退した。





「悪魔はいいなぁ。白鵬を越える力士が見れて」そう思いながら、死ぬ寸前までに越える人が出るのだろうかと、寝床で妄想に更けた。





白鵬翔の闘いはまだまだ続く。俺も仏になる前に、弟子が白鵬を超えて欲しいと思っている。
















<これも是非>
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この2記事は、白鵬が何故最強なのかを、あらゆる面から検証した記事です。かなりの自信作であり大作になっているので、是非熟読して頂けると本当にうれしいです。












シーユーアゲイン なにもあげん