インドのピラニア

野球・相撲 時々その他 自由きままに書く インドのピラニアのように

君は「イチローより年上のメジャーリーガー」を知っているか

イチローが辞めた。本当にやめてしまった。



「50歳までプレーする」と公言して、これまでの野球人生で尽く目標を有言実行し続けてきた伝説の男が辞めた。



あまりのハードワーク、あまりの過密トレーニングをフルにこなし、一時期本当に「イチローって本当に衰えるのだろうか…?」と当時見た野球ファンは誰しもがそう思っていた時期があった。今しか知らないファンは信じがたいような気がするが、確かにその時期があった。



ちなみにもう1つファンが信じて疑わなかったのは「松坂は投げ込むほど調子が良くなるし、肩なんか痛めない」である。当時は確かに世間を信じられていた定説だ。10年前はそんな時代だったのだ。



今やイチローは45歳・松坂は38歳。ゴールデンエイジとして名高い1980年生まれの野球選手で、バリバリに現役を続けているのはおそらく藤川球児のみ。MLBでもアルバート・プホルスやネルソン・クルーズ位のものだろう。



因みに、MLBでも1980年生まれは当たり年で、200勝投手C・C・サバシアや、リッチ・ヒルもそうだ。合計6人今なおビックリーグでプレーしている。て言うか、1982年の早生まれである青木ですら、MLBの中では大ベテランなのだ。



でも、青木とて35歳までMLBでプレーをする事が精一杯だったし、それより10歳年上のイチローが野球をし続けているのは、誠に信じられない事だ。
なのだが、MLBにはただ1人、「イチローよりも年上のメジャーリーガー」が居ることも忘れてはいけない。という訳で今回の主役の紹介である。



ドミニカが誇る「デブ」バートロ・コローンである。



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「デブ」である。本当に「デブ」である。それしか出ない体型の投手である。スポーツマンとして名乗って良いのだろうか???私も相撲が大好きなので、デブについては一定の理解をしているつもりなのだが、彼の腹は完全にビールっ腹だ。不摂生の塊。イチローと正反対である。



こんな、新大久保のガード下でホッピーをグビグビ飲んでる中年の親父のような選手が、現役1位の247勝と今季46歳になるシーズンでも、今なお世界の最高峰でプレーしようとしているなんて。



タイトルに少々語弊が生じてしまったが、今季のコローンは未だにチームから契約を貰っていない。よって今季はイチローが最年長メジャーリーガーなのだが、前年はコロンがその座に居座っていたし、イチローと違い、ほぼ1年間レンジャースの先発として居座り続けた。つまり、「ある程度活躍している」のだ。このホッピーおじさん。信じがたすぎる。



信じがたいのは、その珍プレーな体格だけではない。40半ばまで支え続けた投球スタイルも唯一無二で、彼は「ほぼ変化球を投げない」のだ。「145km~150kmの動くストレートを、四隅に丁寧に投げるだけ」というニッチ過ぎる生き方をしているのだ。確実に就活で人気が出るタイプの企業・・・もとい野球選手である。



毎年、ストレート系の投球比率が85%を超えているのだが、変化球は僅か15%近辺をさまよっている。この投球比率、全盛期のストレートでねじ伏せていた藤川球児が、ストレートの比率70%付近なので、このおじさんの凄さ(これ凄いと言って良いのか・・・?)が分かる。加えてこのおじさんは1イニングないし、6・7イニングもこれで凌ごうとしている。



そのコローンを象徴するような映像が、2012年の38球連続ストライクである。この体型でこの精密機械っぷり。これは「マダックス」ではなく「デブックス」である。



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「デブックス」の語呂の悪さは置いとくとして、この動画の肝は、本当にストライクを投げ続けている凄さももちろんだが、「敢えてボール球を散らしてみる」とか、「ボール球になる変化球で三振を狙う」などの、いわゆる投球術に関しては全くの無頓着なのだ。「ただテンポ良くコーナーにちょっと速い球を投げる」だけ。勿論バッターを焦らす等の、捕手主導ではない、コローン主導で行える投球術はしているかもしれないが・・・。



初代精密機械ことマダックスは、球こそ遅かったが、コントロールと変化球は歴代でも最高レベルに位置していたから、355勝なんて事が出来たのだが、コローンは変化球ですら「まぁたまーに投げてるような気がするな・・・」レベルである。ましてや、ふとっちょカウボーイ。全くもって不思議である。



何というか、やっぱり複雑な気分になるときもある。あんなにシェイプしたイチローは辞めてしまい、未だにちょっと練習したから、今日は沢山食べて良いだろうと、ケンタッキーでパーティバレルのチキン全部を平らげてそうなコローンが、未だに現役を続けているとは。現実はやはりちょっと残酷である。



ただ、イチローと共通しているところもある。コローンも呆れるほど野球が好きなのだ。



既に2008年には、成績を軒並み落としてマイナー契約しか貰えなかったという苦労人なのだ。コロンは10年前には選手としてもう終わったと思われているというのに、松坂はレッドソックスで全盛期を迎えていた頃である。華々しい日本人の活躍の影で、コロンは肩の痛みと闘い続けていた。



全盛期は160kmに迫る速球と、多彩な変化球を操り、サイヤング賞(2005年)も獲得したこともある投手が、デビューしてからというもの、徐々に球威は落ちてくるわ、腹も出てくるわという「明らかに不摂生じゃね?」という敵と戦ってきたのだ。因みに、デビュー当時は本当に別人のように痩せている。過去痩せていて、現在は肥満。逆ライザップである。



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2008年はマイナー契約だった。
2011年もマイナー契約だった。
2010年に至っては登板すら出来なかった。



しかし彼は復活した。誰よりも深い仄暗い水の底から、誰も真似できないピッチングを携えて、まるで別人になりながらも、奇跡の生還を果たしたのだ。



改めてコローンの野球人生を振り返ってみよう。ここまで野球ってしなくてはいけないものだろうか?
一度頂点を掴んで、億単位でお金も貯蓄もある選手が、何故ここまで現役に固執するのか?そしてそのメリットなんてあるのか?マイナーの過酷な環境・10歳は年下の選手達と混じり、長距離バスに揺られながら、あのただっ広いアメリカ本土を行脚する必要なんてあるのか?
やはり、その答えは「野球が好きだから」ではないだろうか。



イチローは、現役の執念は人一倍だったが、決してマイナー契約は受け入れようとしなかった。それでも徹底した自己管理と実績でメジャー契約を受け取り続けた訳だが、これは野球が好きだった何よりの証拠とも言える。一方のコローンはどれ程肩を痛めようが、どれほど屈辱的な待遇を受けようが、それを受け入れ、何度も谷底から這い上がってきたのである。タイプは違うが、野球を好きでない人には、どのルートも辿ることは出来ないだろう。



そして、去年(2018年)もコローンはマイナー契約だった。しかし、それでも這い上がり、第一線で投げ続けた。しかも、完全試合までもう少しまで迫った試合もあった。相手はそのシーズン100勝以上したアストロズだった。まだ第一線でやれる事を証明した。



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残念ながら、今年はマイナー契約すら頂けていない状態ではあるが、本人は現役を続ける気マンマンである。MLBの歴史は本当におかしくて、最年長登板はサチェル・ペイジという黒人野球のスーパースターが作った59歳である。まぁこれは無理だとしても、ジェイミー・モイヤーの最年長勝利なら49歳なので、微かではあるが、抜ける可能性が出てきた。



イチローは引退後、常にイチローの事を慕ってきたディー・ゴードンが、新聞広告1ページを丸々買い取って、イチローに対する感謝の思いを綴った。コローンは一体どうなるのか。出来ることなら、そんなセレブレーションはできる限り未来に持ち越して欲しい。そんなスーモでした。









シーユーアゲイン なにもあげん